取り込む家
気が付けば俺はチラシを受け取り、映画サークルの部室にまで足を運んでいた。


こんなことしたって意味なんてないかもしれないのに。


そんな思いを抱えながら訪れた映画サークルだったが、咲は意外と明るい性格をしていた。


勧誘の時に黙っていたのはメンバー全員でグイグイ押してくと驚かれると思ったからだと聞いた。


出会ったころから、咲は人の気持ちを考える事ができる子だった。


「いいよ」


目の前にいる咲がさっきまでと同じ笑顔を浮かべてそう言った。


俺はホッと息を吐き出す。


咲ならきっといいと言ってくれると思っていた。


実はもう、サークルメンバーに声をかけてしまっていたのだ。


「映画サークルだし、なにか面白い映画を借りて来なきゃな」


俺がそう言うと咲は「そうだね。なにがいいかなぁ?」と、今度は真剣に悩み始めたのだった。
< 26 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop