取り込む家
なにもかもを包み込んでしまいそうな笑顔に、思わず見惚れてしまう。


俺が咲を好きになったのも、この笑顔に惹かれたからだった。


大学に入学して一瞬間ほど経過した時、俺は映画サークルに勧誘された。


俺は動き回りたいタイプだったから、日長一日映画を見ているだけなんてつまらないと感じて無視するつもりでいた。


勧誘するメンバーの中に咲の姿を見つけるまでは。


咲はチラシを片手に持ち、終始にこやかにほほ笑んでいた。


勧誘に来たくせに他のメンバーたちのようにがっついて来ることもなく、一歩後ろで笑顔を浮かべている。


その姿はまさに花のように見えたんだ。


ひとめぼれだった。
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