取り込む家
音を立てる~翔也サイド~
俺はわざと本を落下させて音を立てた。


ゴトンッ。


と鈍い音が聞こえて来て、すぐに穴から下の部屋を覗いた。


下の部屋ではユウセイと呼ばれている男が音に気が付き、周囲を見回している所だった。


ここだ。


俺はここにいる!


ここ数日間彼等の様子を見ていてわかったのは、彼等は害のない人間だと言う事だった。


大学に通い、映画サークルに入り、そして恋人と同棲を始めたカップル。


健全で犯罪の匂いなんてしなかった。


どうにか自分がここにいる事を知らせて、彼らに助けてほしいと思うようになっていた。


穴から下を覗いていていると、ユウセイが段ボールをほどき始めたのが見えた。


今の音が天井から聞こえて来たと気が付いていないようだ。


俺は一瞬落胆したが、すぐに気を取り直した。
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