2人の王女と2人の騎士


…が、事態は急変した。


神様に願いが届いたというのだろうか。






「本当なのよねティア!?」

「ええ、その通りよ」




旅行から戻って数日後、ティアが王子との結婚を断ったというのだ。
私が聞いたのは今が初めて。




「それと、今後お見合いはしない事に決めたわ」

「しないって、それって…」

まさかと私は息を飲んだ。




「私はクライドと結婚するわ」






「ほ、ほんとなのー!?」



私があまりにも大きな声を出すから、周りの従者たちは何事かといった表情で振り返る。


「もう…耳が痛くなったじゃない」


そう言いながらも平然と紅茶を飲むティア。
一大事だっていうのに、こんなに優雅にしているティアが怖い。というかお見合いを断った上にクライドと結婚だなんて…。

この人は本当にティアルーシェ?
姉様なの?

私はただ恐れおののくかのようにティアを見つめる事しか出来ないでいる。




「それでね、お母様はその事に怒ってしまって、許しをもらえていないの。お父様は良いと言ってくださっているのに…」


そうだろうとは思っていた。

あの厳しいローズマリー様がすんなり了承するはずがないもの。
でもティアがローズマリー様に逆らったのって初めてなんじゃないかな。
相当勇気がないと言えなかったのではないかと、私は考えていた。




「…でも絶対説得してみせるわ。きっと分かってくださるはずよ」



そう言うティアの目には強い決意が表れている。


「それがティアの決めた事なんだね」


「ええ」



それなら私もティアが信じた道を信じてみようと思った。

だってこんなにもはっきりと自分の意思を言葉にしたのはあまりなかったから…。

あるとすれば…あの時かな。


幼い頃の出来事がふと頭に蘇ってきたのだった。

< 43 / 131 >

この作品をシェア

pagetop