私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
「伯父様と叔母さまが来るのよね?」
私は、夫を見送った後、しげさんに尋ねる。
「はい。そのように伺っております」
しげさんは、台所の作業に集中していて、こっちを振り返らずに答えた。
「何か、手伝うことはないの?」
私はしげさんの手元を見ながらいう。
しげさんの見事な包丁さばきで、サトイモがきれいにむかれていく。
ダメだ。苦手だ。
サトイモは食べるのは大好きだけど。
サトイモをむくのは大っ嫌いだ。分が悪い。
「今のところございません。奥様は、その場で笑っていらっしゃればよろしいかと存じます」
まったく取り付く島もない。
「笑ってろってなによ」
しげさんといると、私は何もすることがない。
手際よく何でもやってしまうし、この家のことで相談することがあれば、高陽さんに聞いている。
「しげさん、食事も、洗濯も、掃除も全部一人でするの?」
彼女に用意してもらった朝ごはんは絶品で、身のプリッとした鮭の切り身を食べながら言っても説得力はないんだけど。
「一人というわけではありません。運転手もおりますので」
運転手というのは、しげさんんと一緒にやって来た中年の男で、力仕事や庭仕事、送り迎えなどをしている。
無口な人で、声をかけようとしたら逃げられた。だから、名前も聞いてない。
この人も、ずっと岩槻の家で働いてきたのだろう。
「そうは言っても、何かすることぐらいあるでしょう?」
「奥様にできることは、しげにもできます」
「あっ、そう」すみません。その通りでした。
味噌汁を最後まで飲むと、ごちそうさまと言って立ち上がる。
確かに。しげさんが作った味噌汁は、どこで飲むより美味しい。
私には、この半分程度のお味噌汁だって作れない。