私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
高陽さんが出て行ったあと、しげさんが心配そうに部屋に入って来た。
「しげさん、支度を手伝ってくれるかしら」
「支度って、何のです?」
「アパートに戻るのよ。さっきの話、部屋の外でも聞こえたでしょう?」
「旦那様は出て行けとは……」
しげさんが私を気遣って言ってくれる。
「相手の女性に、子供が生まれるのよ。無視するわけにはいかないわ」
「奥様……私もいろんな方に仕えてまいりましたが、こいう事は何度かありました。
こういう時は、あなたが身を引く必要はありませんよ。
妻として、誰に何と言われても、どっしりと構えておられればよいではないですか」
「しげさん、無理よ。たった今、無理だってわかったの。
私、分かってなかったんだわ。
夫が誰かのところに行くたびに、平然としていられるほど度胸が据わってないのよ。
しげさん、短い間だったけど」
私はしげさんの手を取った。
「奥様」
「はい」
「ようございます。しげは奥様についてまいります。
奥様を一人にしておくわけにはいきません」
「ええっ?ちょっと、しげさん、何を言い出すの?
家のアパートってどのくらいの広さか分かってる?」
「どんなに狭くても、しげは奥様と参ります」