私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~


岩槻高陽が、静かに話し始めた。

「君も、この間、
祖父が亡くなったのは知ってるね?」

「はい、もちろん」

テレビのニュースでやってましたから。

そして。きりっとして、吸い込まれそうな目で見つめてくる。

「祖父が君に財産を残したんだ」

「はあ。財産ですか……」
思ってもみなかった話で驚いた。

「それも、かなりの額になると思う」

「本当ですか?」

かなりの額って、100万円かな。

それなら、臨時のボーナスみたいに
何か買おうかな。

ふふ。思わず顔がゆるむ。

ブーツ新しいの買おうかな。


「喜ぶのはまだ早い」

再び、岩槻高陽の顔つきが厳しくなった。

思わず表情が緩んだとこを、
彼に指摘されてしまったみたいで恥ずかしい。


「悪いけど、このまま無条件に君に、
財産を渡すわけにはいかないんだ」

岩槻グループの若きプリンスが私を睨みつける。


「親族間でいろいろ話し合った結果、

君を……
俺の妻とすることした」


ん、妻?

妻にするって今、言わなかった?

空耳?


「ちょ、ちょっと待ってくださいな」

妻って、私に向かって言ってんの?

それって、奥さんのことよね?っていうことは、私たち結婚するの?

この人と?

いやいやいや。無理、無理。

ダメ。そんなの。

必死に首を振って、抵抗する。


「申し訳ないが、君に拒否権はない。

結婚して妻になった君に譲渡すれば、財産の分散は免れるからね。

数十億の金をドブに捨てるなら、俺は、君と結婚する」

岩槻高陽は、真顔で答える。

「そ、そんな……無茶な。
えっと、無理して結婚するくらいなら、お金なんか、いっそのことドブに捨てたらいかがですか?」

彼の目がキラッと鋭く光る。

「何十億の大金だぞ。気軽に捨てられるか。
俺だって不本意だ。だが、仕方がない。

そんな大金、稼ぐのにどれだけ大変か分かってるのか?
いいな、引っ越しは、一週間以内。逃げても無駄だ。すぐに捕まえる」

苦々しく顔をゆがめて答える彼。

「ひいっ……」

誰か助けて。じいちゃん、何てことしてくれたの?



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