【短編】キスからはじまるカンケイ【完】
「須坂さんに褒められたの初めてです」



ちょっと恥ずかしくなって彼から目をそらす。



「そうだっけ?」


「はい、怒られたことしか多分ないです」


「そうだったっけ。まぁ、褒める部分あまりないのはたしか」



そのまんま自分のデスクへと戻る。


せっかく褒められて嬉しかったのに最後の一言は余計だ。
この人は結局は冷たい人なのだ。
一瞬でもときめいたあたしに忠告したい。
騙されるなと。


いつだってそうだ。
『いつになったら仕事おぼえんだよ』
とイライラしてる。


そういえばこの人は黙っていればカッコイイので結構モテていた気がする。
中身を知っているあたしには到底信じられないけど。
どうせ告白してもあたしにいつもしてるように冷たくされるのがオチだ。



「遅くなる前に帰れよ」



小さく恥ずかしそうにそう呟いた彼に、本当は優しいんだろうなと思う。
わかっていたけど。
でも、大っぴらに優しくなんてしない人だ。



「大丈夫ですよ」


「まぁ、俺が…「茜!」」



須坂さんの言葉を遮ってドアが開く。

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