あの夏の空に掌をかざして
 290回目のループの闇の中。


 回数と「何も分からなかった」という文字だけが増えてしまった日記帳を見て、あたしは焦っていた。


「どうしよう、どうしよう、あと11回しかチャンスがないのにっっ!」


 あたしはまだ、これといった情報を見つけていなかった。


 あれから、また沢山沢山色んな事をした。


 県外にも行ってみたし、もっと大きな図書館に行ってみたりもした。


 けれど、このループを終わらせ、あたしも日向も無事でいられるような方法は、何も分からなかった。


「落ち着け、まだあと11回もあるじゃん!あの本の情報も本当か分からないんだから、落ち着け、絶対大丈夫」


 まずは深呼吸をして、自分を落ち着かせる。


 根拠のない事を言ったけど、それでもポジティブにならないと、おかしくなってしまいそうだった。


 今だって、気を抜いたら泣いてしまいそうだ。手の震えも止まらない。


 こめかみから、嫌な汗がタラリと流れてきて、心臓もバクバクと、不快な落ち着かない音を立てている。


「がんばれ、がんばれ、まだ大丈夫、まだいける!」


 その時、またあの淡い光が灯って、あたしを包み込んだ。
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