あの夏の空に掌をかざして


 あたしも体験したからこそ、込み上げてきた罪悪感に、胸を押し潰されそうになった。


 胸を押さえて立ち止まったあたしに気付いて、日向はあたしを振り返る。


「あかりちゃん?」


 そこに、1台のトラックが、猛スピードで走ってくる。


 日向の意識は、あたしの方に向いていて、そのトラックに気がついていない。


 ……どうせ、日向は10時には死んじゃう、あたしがどんなに助けても、意味がないのならーーーーー。


 あたしは駆け出した。


「わっ!」


 日向を押し退け、そのトラックに向かって飛び出す。


 プップーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキキィィィィ!!!


 最期に日向の方に振り向き、笑顔をしてみせた。


 驚き、強ばった日向の顔と、突然の衝撃と、目の前が真っ赤に染まったのを最期に、あたしは意識を手放した。
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