あの夏の空に掌をかざして
【290回目】

 今回は、男の子が自分から死ぬことを選んだ夢を見た。

 あたしは、寝耳に水をかけられたようだった。

 「自分が死ぬ」という選択が、はたから頭になかったから。

 ……あの男の子は、あれからどうなったんだろう。

 あたしは、どうすればいいのかな。



***


 290回目のループ。日向とのデート、二百数十数回目。


 あたし達は、定食屋さん[さかのぼり]に行った帰り、あの公園に来ていた。もちろん、あたしの靴擦れのせいで。


「もう帰ろっか」


「……ん」


 日向に手を引かれながら、あたし達は出口に向かって歩き出す。


 あたしより、少しだけ前を歩く日向の横顔を見つめながら、あたしは考えていた。


 ……あの男の子は…自分が死んでまで、あたしを助けてくれたんだよね…?


 それなのに、あたしは忘れちゃって、今まで楽しく過ごしてきて、なんだか申し訳ないな…。


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