あの夏の空に掌をかざして

再出発

【292回目】
 日向の言葉に励まされて、あたしは、残りの9回を、楽しもうと思った。

 まだ怖いけど、不安なことも沢山あるけど、このまま、何も出来ずに消えてしまうのは悲しいから、あたしは頑張ろうと思う。


***


 あたし達は、この日、ちょっと遠出して、他の県のテーマパークに来ていた。


「日向はやくはやくー!」


「あかりちゃん、走ったら危ないよ!」


 そんな日向の声など聞こえないかのように、あたしははしゃぎ、日向を急かす。


 あたしに呆れたような顔をしながら、それでもあたしに着いてきてくれる。


「あ、まずはあれ乗ろ!」


 日向があたしに追い付いたところで、近くにジェットコースターを見つけたあたしは、また走り出そうとする。


 そこで、日向があたしの左手を掴んだ。


「はいはい、はしゃぐのもいいけど、ちょっと落ち着こうね」


「……はぁい」


 そう言う日向に、あたしは締まりのない返事をする。
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