あの夏の空に掌をかざして
 あたしを庇った日向は、死んだ。


 トラックに轢かれ、もう手の打ちようも無いほど、大量の血液を頭部から出血して。


 もう、見慣れてしまった光景だ。


 何を感じることもなかった。


 それよりも、あたしは、この出来事を覚えていなかったことに、考えを巡らせていた。


 ……どうして、あたしは、覚えていないんだろう?あれは、失敗したら全て忘れて、ループしている人も消えるはず。


 日向は、成功したんだよね?どうやって……。


 その時だった。











『っっっ陽くん!!死なないで!!』


 幼い頃のあたしは、顔が日向な男の子のことを、"陽くん"と呼んだ。


 …陽、くん…?


 あたしは、またあの光に妨げられて、意識を遠退かせた。
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