あの夏の空に掌をかざして


「中に入っちゃってるね、救急箱を持ってくるよ」


 そう言って、日向は奥に行った。あたし達は、昔からお互いの家を行き来しているから、お互いの家の構造や、家族しか知らないような事も共有している。


 日向が戻ってきて、ソファに座って治療してくれた。


 ……あたし、日向の前ではケガしてばっかだな。


 その事に、少しだけ恥ずかしくなる。ただでさえ異性として見られていないのに、更に子供っぽいところを見られたら、あたしはもうどうしていいのか分からなくなる。


「ひなた、……ごめんね」


 日向は、あたしの言葉には何も言わないで、その代わり頭を撫でただけだった。


「早くよくなりますように」


 あたしの左手に、キスをする。


 これは、昔からの日向のおまじないだった。これをしてもらうと、ドキドキして、痛みも何もかも吹っ飛んでいってしまう。


 唇が触れた指先から、ブワァと熱が広がっていく。


 熱っぽい頭で、救急箱を戻しに行く日向の後ろ姿を、あたしはずっと見つめていた。
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