あの夏の空に掌をかざして
 手の甲に、ポタリと何かが滴り落ちた。


 座って、うつ向いていたあたしは、それが涙なんだと気がつく。


「ふ……うっ、……ふぅ……ひっく、ぐす……うぅ~」


 それから次々と溢れでてくるソレを、あたしは止める術を持っていなかった。


「もう……やめちゃいたい!やめたい!やめたい!……もうやだよぉ」


 抑えきれなくて、誰も居ないことをいいことに、あたしは声を荒げる。


「やだ!やだ!もう、あたしばっかり戻るのも、なにもかもやだ!!!」


 やり場のない怒りを吐き出したくて、近くにあったクッションを投げる。それはポン、とベッドに叩きつけられて、力なく床に落ちた。


「っ……もうやだ……」


 あたしの弱々しい声は、最後は涙声となって、静かな部屋に響いた。


 ……ばかみたい、こんなことやってても、何にもならないのに。



 そんなあたしの耳に、足音が近づいてくる気配がした。
< 84 / 203 >

この作品をシェア

pagetop