先生、僕を誘拐してください。
交差点は信号があるからぶつからないけれど、私たちに信号はない。
きっと迷う。でも窓辺に現れる奏の本音みたいに皆素直に言えるわけないから、謎が開けられるのは良い事なんだと思う。
「あー、やっぱ先に帰ってるし」
ボーっとしていたら蒼人が帰ってくる。
二階の窓から見ると、蒼人も奏の自転車を見て首を傾げている。
「蒼―」
「うわ、びっくりしたっ」
「その自転車。ハンドル曲がってるみたい。危なくない?」
「はー?」
自転車の周りをぐるぐると回って、遠くから絵画でも見るかのように顎に手を置いて唸る。
「危ないなら、裏に母さんの自転車あったじゃん。あれに乗らせよう」
「ぷっ。名案」
事故られるよりましか。
「あーあ。姉ちゃんが其処に居るってことは、メシは奏かぁ」
嫌そうな顔で家に入ってく弟に、笑いつつ私も制服を脱ぐ。
どうしよー。いつ電話来るかな。
もしかして、10時過ぎの奏たちが居なくなってから?