先生、僕を誘拐してください。

「なんで」

「もし本音が見えてたら、きっとお前、俺のこと目も合わせてくれなくなる。ろくなこと考えてないから、俺」

鍵を回して自転車から抜くと、さっさと家に入ろうとするので慌てて着いて行く。
早く歩くせいで、奏の顔がよく見えない。表情が分からない。

「じゃあ見えててもいいの?」

「どうせ本当の真実は見えないだろうからね。俺は気にしないけど」

「!」

こいつ。
私の部屋に現れる可愛い本音くんのことをじっくり教えてやろうか。
私のことを先生と呼び、カナリアのような美しい声で泣く本音くんのことを。

「さっさと二階に上がっとけ。邪魔だから」
「言われなくても。あー、奏のめちゃくちゃ美味しいご飯楽しみだなあ!!」

わざとハードルをあげてやる。べーっと舌を出しながら階段をあげって逃げるように部屋に入った。

部屋の中をぐるぐるして、書斎に行くかどうするか少し迷ったけれど、今しかないと思った。
なので電話しようと思って携帯を取り出して、気付く。
――私が教えただけで、向こうの番号知らない。

焦って部屋に入って馬鹿みたいだ。

……奏や蒼人に内緒。
それでいて、村田くんと朝倉くんは親同士も仲良しの塾仲間。
なんかちょっと複雑だ。


色々交差して迷路みたい。
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