先生、僕を誘拐してください。
じゃあもう少し遅くなるかと私も時計を見上げながら奏の隣に座る。
「お前、修学旅行行ったけ?」
「愛って面倒くさいね」
「!?」
同時に話し出した内容があまりにかけ離れていたため、お互い顔を見合わせて目を見開いた。
「修学旅行は行ってないよ。私、、飛行機恐怖症なの」
「初めて聞いたし」
一年生の時から積立金してたけど、その額でお母さんの入院や手術代を払ったらちょうどいい感じだった。保険に入っていたからこの程度で済んだんだけど、無保険の朝倉くんの恋人さんからはまだ一円もいただいてない。
恋人が大切なら、全額払ってくれたらいいのに。
「例えば、奏の大好きな人が大量殺人犯で」
「物騒だな」
「慰謝料払うおかねもないくせに死んじゃって」
「無責任」
「恋人の奏は、どうする?」
大量殺人しても愛せるのか。
無責任でも愛せるのか。
本人の代わりに謝罪するんではなく、ただこの人は俺の好きな人です! いい人なんです! と被害者に言い訳するのか。
「俺の好きな人は殺人しないから」
「好きな人、ねえ」
私のことを先生って呼んでいた奏が、そんな生意気なことを言うようになったんだ。
「夏休み、付き合ってよ」