先生、僕を誘拐してください。
「唐突だね。何?」
苦笑すると、奏はポケットから二枚チケットを取り出した。
隣の駅側にある博物館のチケットだった。
「触れる動物園ができるらしい。夏限定」
「ぷ。あんた小動物とか好きだったっけ?」
「カナリアが来るんだって。カナリアの中で一番きれいな歌声の、なんちゃらカナリア」
「なんちゃらって、名前もうろ覚えじゃない」
「うるせえ。行くから時間とか日にちとか決めろよ。部活も適当に理由つけないといけないだろ」
もしかして、蒼人には内緒で行くつもりなのかな。
のけ者にしたら、後で絶対喧嘩になると思う。意外とガキなんだよ。あの子。
「これ、デート?」
チケットを一枚受け取りながら、尋ねる。
すすと真っ赤になりながら奏は横を向いた。
「デート以外ないだろ」
「ふふ。しかも、なにこれ。無料招待券じゃないじゃん。割引券じゃん」
「うっせ。父さんが貰ってきたんだ」
必死で冷静さを装っているけど、チケットを持つ手が震えていた。
「ありがと。楽しみ」
「そうだろそうだろ。感謝しろ」