先生、僕を誘拐してください。
村田くんのそんな発言のせいで、汗を流しながら両手でチョコバナナを売る敦美先生を想像してしまった。
「……敦美先生は運動場で運動部の出し物の管理だ」
「ほんと、可愛いものと並べないでよ」
「ぷぷ。超ウケる」
村田くんが一人で爆笑していたら、不満そうに女の子たちの声が漏れてきた。
「もー。奏くん、はやくー」
「奏に用事頼んだの、私なんだよー」
甘えた声というか、猫撫で声に奏が面倒くさそうに振り向く。
「わーった!」
露骨に嫌そうな顔をしているのに、二人の女の子は全く屈せずに話しかけながら歩いていく。
「私が奏にあんな顔されたら、凹むわ」
「えー、絶対しないっしょ。てかしたことないでしょ」
村田くんが遠ざかっていく奏たちを見る。
「あの子たちは、クールぶってる奏しか知らないから平気なんだろうけど、幼馴染の蒼のおねーさんは違う。あいつの本当の部分見てる」
「村田くんが真面目な話するのちょっと困るよね」