先生、僕を誘拐してください。


「ある」

即答した奏の指先が、私の髪をさらった。


「ずっと一緒に居たい。美空を守れる恋人になりたい」


それは、今言う必要はあるのだろうか。
今、休憩15分の間に言うなんてムードも何もないんじゃないだろうか。

そう思ったのに、見上げた奏の顔は優しくて、甘くて。

きっと落ち込んでいる私に気づいて、言ってくれたんだと思う。

俺は何があっても私のことが好きだと。


「部活、何時に終わるの?」

「すぐに終わらせる」

まるで自分が部長みたいに奏は言い切ったので私は笑った。

「じゃあ、ここで待ってようかな。奏の自転車の後ろに乗せてよ」

「校則で禁止されてるだろ」

「ダメ?」

「――返事次第」

「じゃあ、奏が喜ぶ返事を考えておこうかな」

胸をそっと押して、腕の中から逃げた。
そして奏から自転車のカギを渡されたので、にへっと笑う。

「坂下りたところの、校門と使ってない民家の間の道に自転車止めてる。そこで待ってて」
< 152 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop