先生、僕を誘拐してください。
「ある」
即答した奏の指先が、私の髪をさらった。
「ずっと一緒に居たい。美空を守れる恋人になりたい」
それは、今言う必要はあるのだろうか。
今、休憩15分の間に言うなんてムードも何もないんじゃないだろうか。
そう思ったのに、見上げた奏の顔は優しくて、甘くて。
きっと落ち込んでいる私に気づいて、言ってくれたんだと思う。
俺は何があっても私のことが好きだと。
「部活、何時に終わるの?」
「すぐに終わらせる」
まるで自分が部長みたいに奏は言い切ったので私は笑った。
「じゃあ、ここで待ってようかな。奏の自転車の後ろに乗せてよ」
「校則で禁止されてるだろ」
「ダメ?」
「――返事次第」
「じゃあ、奏が喜ぶ返事を考えておこうかな」
胸をそっと押して、腕の中から逃げた。
そして奏から自転車のカギを渡されたので、にへっと笑う。
「坂下りたところの、校門と使ってない民家の間の道に自転車止めてる。そこで待ってて」