先生、僕を誘拐してください。
「じゃあ体育祭は」
「騎馬戦、棒取り、応援合戦、200Ⅿ、紅白リレー」
「げえ! ハードすぎ! 二日目は?」
「生徒会が映画の上映アシスタントする」
「一日目は?」
「露店とバンドとバタバタしそう。でも、美空と回る時間は確保する」
大丈夫なのかな。なんで奏、そんなにいっぱい役について走り回ったりしてるの。
びっくりして言葉を失っている私を見て、奏は疲労した顔をくしゃくしゃにして笑っていた。
「大丈夫だよ。なんか何かやってないと落ち着かなくてさ」
「無理しないでね」
「で、博物館の招待券さが、来週の日曜までだから行こうよ」
「え」
「カナリアは触れないけど。行くだけ行こう」
奏の笑顔に、いやだといえる雰囲気じゃなかった。
でも無理してる。
何か奏から違和感があった。
バイトを終えて家に帰ると、その日はもう奏がソファで爆睡していた。
「奏―、校門の看板なんだけど、ちょっと耐度やばくてガムテープでさ」
「しっ。寝てるでしょ。てかまだ学際準備してたの?」
私より後に帰ってきた蒼が、眠ってる奏を見て、慌てて口を抑えた後私に小声で言う。
「一年は土日も学校だよ。三年は完全にお客様だからいいよな」