先生、僕を誘拐してください。
いきなり直接的な言葉に一瞬言葉を失う。けど全身の血が沸騰しそうになりながらも頷いた。
「じゃあお願いよ。奏くん、今はきっと聞いてくれないと思うけど、いつか、いつか聞いてくれたら、言って。誰もあなたを責めないわって」
「……何を?」
お母さんは少し躊躇しながら、目を落ち着きなく動かす。
「あなたは悪くないって、言ってあげたらいいの」
「だからなんで?」
お母さんは躊躇しながらも、その言葉を吐いた。
「お母さんとお父さん、あの日、奏くんを見つけてから一緒に16時のバスに乗るはずだったの」
「うん」
「でも奏くんは蒼人たちのバスに乗せてもらえたらしくて、お父さんが何度も連絡しても繋がらなくて、繋がったときは16時着のバスは出発してて、次のバスに乗ったの」
お母さんの言葉に、二人の寝息が静かに重なった。
「誰にも言わないだろうけど、奏くんは自分を責めてると思うの。良い子で、許されようと頑張てるの」
お母さんのその言葉に驚いた。
驚いたのに、窓辺の本音くんの様子、意味深な言葉が、すべて一致したように感じられた。
「……お父さんなら、奏を巻き込まなくて良かったって言うだろうね」
「そうね」
「私もそう思うよ。だから大丈夫。誰も奏を怒っていないって私、伝えるよ」