先生、僕を誘拐してください。
私がそう言うと、プッと堪え切れずに零れた笑いを必死で横を向いて隠す。
その笑い方も嫌味が無くて、ストーカーじゃないのなら好感度高いのに。
「もうすぐ期末テストだから、テスト中はストーカーされないでしょ」
「でもテストが終わったら、三者面談でしょ。私、白紙で出そうかな、テスト」
「あはは、格好良いね、武田さん」
朝倉一は、楽しそうだ。
人の不幸は蜜の味だと言われたようで、逆に私はこの人の爽やかな笑顔が大嫌いになりそう。
きっと本心からで、この人は優しい人だって分かるんだけど、一度ヤサグレてしまうとなかなか人の心は丸くはならない。
「朝倉くんは、三者面談大丈夫なの?」
「ああ、うん。まあね。ダメなら就職して自分でお金溜めてからその学校行こうかなって思ってる」
「朝倉くんって、何の専門学校を希望してるの?」
何でそんな風に周りが反対するんだろう。専門学校って、色々専門教科の資格とかとれて、それはそれで就職しやすいし、本人にはそんな悪い話ではないはずなのに。
「イラストレーター」
「……絵の成績良かったっけ」