先生、僕を誘拐してください。

ぐうの音も出ない。
勝手に現れたとはいえ、本人に現れてるよ、聞いちゃってるよ、と言ってない。
そもそも言っても信じてもらえないかもしれないのに。


「あ、奏くーん」

朝倉くんたちに掴まっていたせいで、音楽室の前で奏が携帯を片手に立っていた。

体操服なのを見ると、合唱が終わってから部活へも行くようだ。

「本当に奏くんもいいの?」

「良いっすよ。声、治ったんで」

マスクをしていない奏の声は、落ちついた低い声。
思わず私の頬は緩んだ。

「やった。じゃあ私たち楽器やるしハモるから、歌って。あ、今鍵開けるね」

音楽室の鍵を開ける未来ちゃんを確認したのち、私の方を振り返る。

「俺」
「二学期から生徒会?」

「……なんで知ってんだよ」
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