先生、僕を誘拐してください。
普通に返事が返ってくる。
当たり前のことなんだけど、半年以上マスクで隠されていた事を思えば嬉しい。
本音に会えて、奏は嫌かもしれないけど私には良かった。
「さっき村田くんと朝倉くんが話してたから」
「っち」
「接点無さそうだけど、ちょっと親しげだったね」
「ああ、同じ塾だったんです。朝倉生徒会長の家の塾」
未来ちゃんが音楽室の部屋を開けると、むわっと熱気が飛び出して来た。窓も閉め切っているせいでほこり臭い。
それなのに冷房を入れて、すぐにグランドピアノの方へ向かう。
「朝倉生徒会長の塾、すっごい人気あるんですよ。現役大学生が大学受験の必勝法教えてくれたり、塾長は大学教授でたまに大学で講演会したり。中三の受験コースなんて定員100名なのに、倍以上の生徒が応募したり」
「……俺は嫌い」
「奏」
「なんか、優等生すぎて面白くねえ。ズボン脱がせてやろうかな」
「発想が中学生じゃん。見た目しか成長してないとかがっかり」
未来ちゃんに言われても、ブスっと不機嫌そうな顔を止めない奏に、私も笑いがこみ上げる。
「他の二人は?」