『誰にも言うなよ?』


レオは、あのとき

わたしを傷つけて楽しんでたの――?


「……最低」


意味が……わからないよ。

なんでそんなことするの。


「ははは」


レオが、乾いたように笑った。


あまりの冷たい視線にゾクッとさせられる。


まるで、出会ったばかりの頃のレオに戻ってしまったみたいだ。


「被害者ぶらないでよ」


(レオ……?)


「ヘンなの。キミの基準ってボクなの?」


――怖い。


「ふぅん。それじゃあ、ボクの言うことが“絶対”なんだ? よーくわかった」


レオが。


怖い。


「だったら今すぐボクのものになれよ」

「レオ、」


ぐっと近づいてくる。

逃げ場なんて、ない。


「それが――」

「っ、」


次の瞬間


わたし達の距離は、ゼロになった――。


「“モトコの幸せだから”」


耳元から聞こえてきたのは



「……って、ボクが言えば。キミは、その言葉を疑わないの?」


(……!)


とても優しい囁き声だった。

< 320 / 540 >

この作品をシェア

pagetop