『誰にも言うなよ?』


依頼主の旦那さんは、爽やかな男性だった。

あんな人が本当に不倫を……?


連れているのは明らかに年下の女性。


「友達とかじゃ、ないんですかね?」

「だとしても2人でくるかな」

「……2人とも絶叫マシンがめちゃくちゃ好きとか」

「木乃は、あくまで黒だと思いたくないみたいだな」

「だって。デートしたいなら奥さんと来ればいいのに」

「俺たちの仕事はな、余計な感情移入しないで見たままの事実を報告するだけだ」

「…………」


“俺たち”って言われただけなのに、それが、すごく嬉しい。


よく考えると先生とこんな場所に来れるなんてラッキーなんじゃない?


いや、浮かれるでない。

あくまでこれは仕事だ。


「あの男、教師らしい」

「……え?」

「一緒にいるのは、教え子なんだと」


(うわぁ……)


そういうのって、ホントにあるんだなぁ。

不倫現場を目の当たりにしただけでも信じられないのに。


「ったく。ボーダーラインは守れっての」

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