fantasista






そんな中で……

戸崎は一歩も引けを取らなかった。

いや、むしろ目立っていた。





前半十五分、後方からのアシストを受け、力強い無回転シュートを放つ。

まるで弾丸のように、そのシュートは相手のゴールを突き抜けた。





青色の集団が湧く。

そして、戸崎コールが起こる。

舞さんも立ち上がり、青いタオルを振っていた。

そしてあたしは……

熱く焦げそうな胸をぎゅっと掴む。




なんなの、このときめき。

こんなときめき、味わったことがない。

……いや、五年前まではしょっちゅう味わっていた。

こんな気分になれるのは、戸崎だけだよ。






顔をくしゃっとさせてピッチを駆け回り、チームメイトに飛びつく戸崎がスクリーンに映る。

あたしの大好きなその笑顔を見て……

泣きそうになった。




昔から輝いていた戸崎だけど、今は眩しいほどに光っている。

スタジアムを沸かせる戸崎は、やっぱり手の届かない存在なんだ。




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