fantasista




そんな戸崎、今日はなんだか疲れている。

そして、湿布の香りが漂ってきた。




「負傷ですか?」




わざとらしく聞くと、うるせぇよと言われる。

そして、気まずそうに頭を掻きながらあたしに告げた。




「昨日、ほとんど寝られなかったからな。

やっぱり駄目だな、寝不足は」




戸崎は何気なく言ったのに、あたしは昨日のことを思い出して赤くなる。

戸崎と手を繋いで歩いているだけなのに、身体が一気に熱を持つんだ。






昨夜、戸崎は一晩中あたしを抱きしめてくれた。

優しく、腫れ物に触れるかのように。

その腕の中で、すごく幸せだと思った。

あたしには、戸崎しかいないと思った。

そんなこと、戸崎には言ってやらないけど。



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