好きだから……
 京ちゃんの言う通りで、努力しても結果に導けない。
 頑張って料理しても、食べられるものが作れないんだから。

 ちらっとカナちゃんのさらに後ろにいる圭ちゃんに目をやる。

 圭ちゃんに手作りの料理を作れるようになりたいな……って、食べられるのを作れるようになるのに、あたしは何年かかることやら。

あたしの料理は、『こんなもの、食いもんじゃねえ』ってきっと捨てられちゃうんだろうなあ。

「おい、やめとけよ! 美島にあげたいなあ……とか考えんなよ」
 あたしの視線に気が付いたのか、カナちゃんが必死な声をあげた。

「え? そんなこと……」
「考えたろ?」
「……ハイ、考えました」

 あたしは項垂れてから答えた。
 
 やっぱ、駄目……だよね……。








『部活で遅くなる。洗濯物、やっとけ』
 学校を出ると、圭ちゃんからラインが入った。
 自転車を一度、止めてスマホの画面を確認した。

 見てた? 学校を出ていくのを圭ちゃん、もしかして見てたの?

 あたしは学校の門に振り返る。
 振り返ったからって、圭ちゃんが見えるわけじゃないけど。
 うれしかったから。

 もし帰宅する姿を圭ちゃんが見ていてくれたなら、それだけで嬉しい。
 洗濯物、やるよ!
 圭ちゃんのだもん。喜んで、やらせてもらうんだ。

「土屋さん……だったわよね?」と誰かに呼ばれて、あたしは声の主を探した。
「あ、青田さん」と声の主を見つけて、あたしはペコリと頭をさげた。

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