好きだから……
「ああ……これな」と俺は呟くと、ガサガサと中身を出してゲーム二本ほど、美島に差し出した。

「いらねえよ」
「お前にじゃねえよ」
「ああ?」と美島の眉間に皺が寄る。

 嫌味をした仕返しだよ、ばーか、と心の中で呟いてみる。

「絢に渡しといて。夏休みでも、どうせ毎日会ってんだろ」
「ああ?」
 お前はヤクザか? と突っ込みを入れたくなるほど険しい顔つきで、俺を睨んでくる。

「絢に貢いで、振り向くとでも? 言ったよな? 絢は俺のだ」
 美島の牽制球に、俺はくくくっと喉の奥で笑い出した。

 知ってるっつーの。
 学校の廊下で、あんだけ宣言すりゃ。誰も、絢に下心を抱けねえよ。

「美島は、忠犬ハチ公だな」と俺は笑った。
「はあ?」と美島が不機嫌あらわな表情になった。

「道端で、ガンたれ合ってんのも、バカみたいだから。どっか入んね?」
 俺は近くに見えたコーヒーショップを指さした。

 美島も納得して、俺らはコーヒーショップに入る。
 涼しくて、「はあ」と思わず息が漏れてしまう。

 外は熱いうえに、暑苦しい美島の嫉妬を前面に受けて、汗がとまんねえっての。

 美島はアイスコーヒーをブラックで、俺はチョコのフラペチーノでクリーム多めで注文して席についた。

「お前、餓鬼だな」と俺の飲み物を見て、嫌味全開の笑みになった。
「うるせーな。おっさんくせえコーヒーより可愛げがあるだろ」
「あ?」
「ん?」
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