溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 会議室に入ると、それぞれ腰を下ろした。上座の真ん中に永井さんが座り、両隣を二人の担当者が挟んでいる。
 サマースーツ姿の永井さんは、今朝見た時よりも引き締まった表情で、配られた資料を捲って目を通している様子だ。
 イニシャル入りのペンを持つ手が綺麗で見惚れていると、おもむろに眼鏡をかけてスクリーンに目を向けた横顔に、私の胸の奥が握られたように苦しくなった。


「御社のチャペルで挙式をするカップル向けのプランを企画いたしました。この件につきましては、担当者レベルではありますが諸条件をすり合わせて、両社に利益が出るように設定しております」

 担当社員が説明を始めると、永井さんは真剣な面持ちで話に聞き入っている。その表情は大企業のCEOそのものだ。
 私も真面目に話を聞いてメモを取っているはずなのに、いつにも増して緊張が解けない。それに、集中したくても彼の眼鏡越しの視線で見つめられると、頬がいちいち熱くなってしまう。


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