寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
村人たちが口々にリディアを褒めたたえる声が聞こえてくる。リディアは恥ずかしさから顔を赤くしてうつむいたが、内心はうれしくてたまらなかった。なにせ、リディア自身が褒められたのなんて初めてのことだったから。褒められるのはいつだってリディアのふたつ年上の姉、マイアだった。

『マイアは本当に美しいわね。それに比べて、リディアは……せっかくかわいい顔をしているんだからもう少ししとやかにできないのかしら』
『リディア! また転んで怪我をしたの? 少しはマイアを見習ってちょうだいな』

マイアのように上品に、女らしく、何度そう言われてきただろうか。みんな悪気があってのことではない。それはわかっていても、言われるたびにリディアはおもしろくないと思っていた。自分の活発さや勇敢さは男の子だったら褒められているはずなのに……。

そんなリディアにとって、収穫祭での舞を褒められた、ただそれだけのことがこの上ない喜びだったのだ。
(もっと練習しよう! 来年はさらにうまく踊れるようになってみせるわ)
興奮も冷めやらぬなかで、リディアは自分の踊りにさらに磨きをかけることを決心したのだった。
この収穫祭をきっかけに、村でのリディアの株は急上昇することになった。
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