寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
これまで、嫁にきてほしいと請われるのは姉のマイアばかりだったが、リディアにもたくさんの縁談が持ちかけられるようになったのだ。
リディアはまだ十七歳。焦るような年齢ではないが、あと数年もすれば結婚適齢期を迎える。

「なぁ、リディア。バロック先生のところのカイネと結婚するって噂は本当なのか?」
ある日の午後、家の前で洗濯物を干していたリディアのもとに、お隣の次男坊ルークがやって来た。ルークとは同じ年だが、リディアは甘ったれなところのある彼を弟のように思っていた。

「ん~、バロック先生からそんな話があったのは本当よ。でも結婚なんてまっぴら。私、アイツ大嫌いだもの!」
バロック先生は村で唯一の教師で、誰からも好かれる人格者だ。リディアも彼のことは心から尊敬している。だけど、その息子のカイネは昔から弱い者いじめばかりする卑怯者で、リディアの最も嫌いなタイプだ。結婚なんて死んでもお断りだと思っている。

「けど、バロック先生のところは金持ちだろ? お前が嫁げば、家族はみんな喜ぶんじゃないか?」
核心を突くルークの指摘に、リディアはうっと言葉を詰まらせた。
「……そうなのよ。カイネって外面と要領だけはいいでしょ?父さんも母さんも、これ以上ないいい縁談だって大喜びなのよ。でも、カイネだけは避けたいわ」
< 3 / 26 >

この作品をシェア

pagetop