カノジョの彼の、冷めたキス



首を縦に小さくふったあたしの頭の上に、渡瀬くんが手のひらを置いた。


「穂花」

渡瀬くんから名前を呼ばれたのは初めてで、優しい温もりのこもったその声に胸が震えた。


「好きだよ」

熱っぽい目であたしを見つめた渡瀬くんが続けざまにささやくから 、嬉しくて胸が爆発しそうになる。


「あたしも……」

慌てて応えたあたしの髪を、渡瀬くんがそっと撫でる。

少し照れながら上目遣いに渡瀬くんを見ると、彼があたしの額にキスを落とした。


< 145 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop