カノジョの彼の、冷めたキス
「じゃぁ斉木さん、ここはお願い……って、聞いてる?」
「すみません、聞いてます」
渡瀬くんに気を取られて一瞬うわの空になっていたことを、原田先輩に気付かれた。
あたしの視線がどこを向いていたのか見抜いた原田先輩に呆れ顔で笑われる。
「それは急ぎじゃなくて、明日までで大丈夫だからよろしく」
「はい」
三宅さんにはあたしと渡瀬くんが付き合っていることはバレているけど、原田先輩もそれとなく知っているんだろうか。
あたしは俯いてパソコンに向き直ると、原田先輩に頼まれた仕事に取りかかった。
渡瀬くんのことは気になるけど、仕事ではあたしは原田先輩の営業補佐だ。
今はちゃんと自分の仕事に集中しないと。
そこからは渡瀬くんのほうは見ずに仕事を片付けて、定時過ぎには退社した。