カノジョの彼の、冷めたキス


「お先にごめんね。皆藤さん、婚約おめでとう」

奥の席の皆藤さんに聞こえるように、大きな声を出す。

その瞬間、彼女の表情が今にも泣き出しそうに歪んだように見えた。

それ以上彼女の顔を見ていると、自分の中に余計な感情が沸き起こってくるような気がして……

あたしは慌てて個室の引き戸を閉じた。



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