カノジョの彼の、冷めたキス
まだ一緒に行くとも決めてないのに、どんどん話を進めていく。
「斉木さん」
困ったなぁと思いながら話を聞いていたら、不意に横から名前を呼ばれた。
ふと見ると、私から離れたところに座っていたはずの渡瀬くんがいつの間にか隣にやってきている。
「斉木さん、俺たちはそろそろ失礼しよう。遅くなりすぎてホテルにチェックインできなくなったら困る」
渡瀬くんに言われて時間を確認すると、もう22時を回っていた。
事前に遅くなることは伝えてるけど、移動時間も考えたらそろそろ出た方がいい。
「高下さん、すみません。あたし達、今日はこれで……」
立ち上がろうとすると、高下さんが手を挙げてにこりと笑った。
「お疲れさま。明日会えるの、期待してるよ。行きたい場所とか食べたいものとかあったら考えといてな」
高下さんの言葉に、渡瀬くんが怪訝な顔をした。