カノジョの彼の、冷めたキス


「斉木さん。明日会えるって何?」

「なんか話してたら、なんとなくの流れで明日大阪観光の案内してくれるって話になって」

「は?明日の新幹線、午前中のチケット取ったよな?」

「うん。だけど遅らせたらいいとかなんとかで……」


「そうそう。せっかく来たんやからって話しててん。渡瀬くんに急ぎの用事があるなら先に帰っといたら?」

渡瀬くんとの会話に、高下さんが横槍を入れてくる。


「いや。普通に意味わかんねーから。俺らは出張で来たんであって、遊びに来たわけじゃねぇだろ」

「うん、そうなんだけど……」

「観光なら自分のカネで来たときにしろよ」

「うん、まぁ。そうだよね……」

渡瀬くんの口調はいつもより強くて、すごく怒っているみたいだった。

高下さんに話を合わせて適当な返事をしてしまったあたしが軽率だった。


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