カノジョの彼の、冷めたキス
身体に触れながらあたしを見下ろす渡瀬くんの瞳は何だかいつもより熱っぽくて、その表情は暗がりの中でとても艶めいて見えた。
あぁ、かっこいいな。
不安な気持ちは変わらずにあるのに、渡瀬くんの表情があたしの胸を高鳴らせる。
ただ見つめているだけでどうしようもないくらいにぎゅーっと胸が痛んで、彼の気持ちがどこにあっても、今はこのまま流されて身を委ねてしまいたかった。
「わ、たせく……ん」
どうしよう。
ただ見つめているだけで、こんなに胸が苦しくなるのは初めてだ。
名前を呼ぶ、声が掠れる。
「す、……」
好き……
その言葉がうまく声にならなくて、かわりに涙がぽろりと一粒、静かに頬を流れる。
このまま、渡瀬くんと……
そう思って目を閉じる。
だけど次の瞬間、あたしの胸に触れていた彼の手がすっと離れた。