カノジョの彼の、冷めたキス
嫉妬と自惚れ
目の疲れを感じて、パソコンのデスクトップから一度視線をあげる。
すると、ちょうどデスクの側にあるコピー機を使っている渡瀬くんの姿が見えて、胸がドクンと大きく鳴った。
休むことなく手を動かしている渡瀬くんは忙しそうで、あたしの視線に気付く様子はない。
それをいいことに、あたしはパソコンの陰に隠れるようにしながら渡瀬くんをじっと見つめた。
同じホテルの一室で一夜を過ごした大阪出張からそろそろ1ヶ月が経つ。
同じベッドで眠った日の翌朝、渡瀬くんはあたしよりも早く起きて出かける準備を整えていた。
「ラウンジでコーヒーでも飲みながら仕事してるから」
そう言うと、あたしを残して部屋から早々と出て行った。
朝目覚めて渡瀬くんの顔を見た瞬間に前夜のことを思い出して恥ずかしかったから、渡瀬くんが仕事を口実に先に部屋を出てくれたことはありがたかった。