愛しかた
だけど当時何も考えていなかった私は、お兄ちゃんのその言葉から「自由」ってところだけをピックアップした。

「自由?」
「そうだよ。綺星みたいに沢山頑張らなくていいんだよ。好きなことだけを好きなだけすればいいんだよ」
「本当!?」
「本当さ」

あの時丁度、バイオリンのお稽古が嫌で嫌で仕方なかった時だったから余計だったと思う。

パパやママの教育方針を無視したお兄ちゃんの言葉をモットーに、小学三年生の私は人生の再スタートをきり、自由主義者への人生を歩み始めた。

期待されていないから、私は努力しなくて良い人間。
期待されていないから、私は好きなことを自由に好きなだけ出来る人間。

けど、三つ子の魂百までと言う言葉は馬鹿にはできない。
それまで厳しく育った私がいきなり自由主義になったところで、その全てのしがらみから解放されるわけでもなく。
なによりも、当時から私の世話役だった咲人がそれを許さなかった。

何事も自由には出来ても無責任には出来なかった。

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