愛しかた
兄の言葉で自由奔放に過ごし始めたときからだ。

「やることはきちんとやって下さい」「責任感を持って下さい」

私に対して咲人は滅多に甘やかさなくなり、手を抜いてやっていいところと手を抜いてはいけないところを一つ一つ教えてくれた。

お稽古中にバイオリンを叩き割ったことで、パパもママも私に何もさせなくなった。ストレスで回りに迷惑がかかるなら端から何もしなくていいという新たな方針を作り出し、私の世話の殆どを咲人に任せた。いや、任せたっていうか押し付けた。

そんな咲人だけが私への諦めを捨てなかった。

「バイオリンが嫌いなのは知っています。何が好きなんですか?」そう尋ねられ、即座にこう答えたのはよく覚えている。

「外国の言葉は好き!とっても綺麗!」

それを期に何故か5,6か国語の言葉の教育を受けさせられた。だけど辛くなかった。楽しかった。意味のわからない言葉の調べは自分のバイオリンの音色とは比にならないくらい綺麗で心地よかった。

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