愛しかた
私が馬鹿で低俗なお嬢様にならなかったのは咲人のおかげだと、お兄ちゃんは咲人に対して物凄く感謝しているのだと言っていた。

今考えればお兄ちゃんて驚くぐらい毒舌だ。妹に対して『馬鹿で低俗なお嬢様』なんて普通言うだろうか。

「入ります」と外から咲人の声が聞こえた。

「お休み中でしたか?」

ソファに寝転がる私の姿に寝ていたと思ったのだろう。

「ううん。昔のこと思い出してた」
「昔?」

バイオリンをみんなの前で叩き割ったこと。と言おうか迷ってやめた。
お茶のセットを持って来たらしい咲人はそれをソファ前のテーブルに置き、紅茶を淹れ始める。

「・・・お兄ちゃんて、毒舌よね?」
「毒舌というよりは率直なのでは?」
「・・・率直・・・」
「壱星様のことを考えていたんですか?」
「まぁそうね。あ、」
「はい?」
「いつか忘れちゃったけど、出かけるわ」
「お茶が入りましたよ。忘れてしまったいつかとは、京真さんがいらっしゃる日曜日のことですか?」

あら、もうご存知なんですね。

「・・・そう、だったかな」
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