星空シンデレラ

「澪田さんは、見学に来たんだよね?どうせなら活動に参加していかない?」

「えっと…」

どうしよう。
固まる私に、後ろからツカツカと足音がして、さっき遼夏をハリセンで叩いた女の子が天海先輩のことまでスパァン!とやった。

「あーもう、部長は甘いんですよ!素人に手を出させないでください!本気で入部を迷っている奴ならともかく、お遊び感覚のやつに何かをいじらせて、アタシたちの舞台に勝手なことさせたくないんです!」

「うーん、僕たちの舞台を真剣に考えてくれるのは嬉しいんだけど…いいじゃん、澪田さんは真剣にやれっていえばやってくれそうな子だよ?」

「言われなきゃやらない時点でアウトです。…まぁ、アンタが本気でやりたいってんなら別だけど…」

そう言って、その強気そうなつり目の女の子は私に向き直った。

「初めまして。アタシ、この演劇部の総監督をしてる谷地 椿(やち つばき)だよ。2年。よろしくね」

「そうなんだ…私も2年だよ。名前は澪田 沙良。こちらこそ、よろしくね」

私がそう言うなり、谷地さんはもうくっついちゃいそうなほどにズイッと顔を近づけてきた。

「…な、なに?」

「…アンタ、なーんか笑顔が嘘くさいんだよね。ちょっとぎこちないって言うか…それ以外は高得点かな。整った顔立ちだから化粧映えしそうだし、どんな役をやらせても合いそう…うん、プロポーションも文句ない。大きすぎず小さすぎず、役者をやるならいい感じになるかも…ただ見た感じ素材は良くても、肝心のアンタから情熱を感じないというか…強いていうなら、残念ね」

「やっちゃん、コラ!まーたキミは演劇部でも何でもない人を勝手に品定めするんだから!」

天海先輩がやってきて、谷地さんの首根っこを掴むとグイッと私から引き剥がした。

「ごめんね〜、澪田さん。この子は初対面の人を役者としてどんな能力があるのか分析しちゃう癖があるんだ」

「い、いえ…大丈夫です」

でも、すごいな。
日頃から演劇のことを考えるような癖がついているなんて、遼夏と同じく、よっぽど演劇が好きなんだろうな…。
…二人がそんなに夢中になれるものなんだ、演劇って。
そう思うと少し興味深い。
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