【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「分かってるけど……恋ねぇ?」
したことがないらしい沙耶は、首をかしげる。
「ま、そのうち、わかるよ。……ほら、大樹!」
茶色の髪は、風に靡く。
見た目はどこかのお姫様のようなのに、性格はまるで、男性だ。
「勇真が待ってるよ」
……いや、お母さんかもしれない。
「えっ、勇兄ちゃんもいるわけ?」
沙耶に変人と呼ばれるもう一人の兄、勇兄ちゃんさんもいるらしい。
「多分、麻衣子もね」
「麻衣ちゃんも!?じゃあ、まって、柚香たちと会ってんじゃん!」
慌てる沙耶は、春ちゃんを見る。
「マジ?みんないるわけ?……ごめんねぇ、行くって、馬鹿たちが聞かなくて。ってか、麻衣子は聡明だから、大丈夫よ」
「……そうかなぁ」
「ええ。もしかしたら、勇真の方が焦ってるかも」
「……想像がつくなぁ」
「でしょ?だから、大丈夫」
立ち上がって、大樹さんの腰を叩く春さん。
「とりあえず、自己紹介ね」
笑う彼女は、名前の通り、春のようで。
「私は、小栗心春。大ちゃんの面倒を主に見てます。こいつは、沙耶の兄貴の黒橋大樹ね。妹がダーイ好きな奴だから、色々と言うかもだけど、その雰囲気じゃ、それぞれに思っている相手がいるみたいだし……」
「わかんねぇぞ。男は、欲情する生き物で………」
「うっさい。大樹」
バッサリと切り捨てる彼女に迷いはなく、瞳には強い光。
「女をとっかえひっかえは、あんたでしょうが」
「今はやってねー…」
「今はってことは、昔はやってたわけでしょ?屁理屈言わない。男子高校生で欲情……健康の証じゃない」
ふんぞり返って、そう言った春さん。
「ね?変わり者でしょ?」
沙耶のその言葉に、俺らは頷くことしかできなかった。
けど……沙耶はこんな人たちに囲まれて、大きくなってきたと言うのなら……誰よりも、彼らに感謝したいと願う。
人は、いくらでも変わる。
状況、感じ方。
理由は、さまざまだけれども。
前世がなんであろうとも。
人は歪むときは歪むのだ。
そんな彼女を引き留めた、存在。
”春“
……そのものの人間に微笑みかけられて、
相馬はぎこちなく、それを返した。