【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1



「じゃ、入ろ……」


門に手をかけ、沙耶が足を踏み出そうとしたとき。


「…………沙耶!!」


遠くから、誰かが彼女の名を呼び、振り返った沙耶は面倒臭そうな顔をした。


「……げっ!」


そういう相手を、彼女は普段は無視するが……


「……久しぶり、大兄ちゃん」


相手が兄貴だと、違うらしい。


大兄ちゃんと呼ばれた男は、俺らを見ると、怒った。


「この男たちは誰だ?」


そんな彼の傍らに立つ女の人は、呆れたように沙耶に手を振っている。


「友達」


ぶっきらぼうに答えた沙耶は、微笑んで。


「友達……嘘だろ?」


「なに、ショック受けてんの。そりゃ、女子高校生だもん。男の一人や二人、いるよ。馬鹿じゃない?」


愕然とする大樹さんに、とどめを差す隣に立っている女の人。


「春ちゃん、ただの男友達だよ」


「あら、そうなの?漸く、沙耶にも、女の子らしさが出てきたかと思ったのに……この馬鹿は放っておいて良いから、好きに恋するんだよ?」


どうやら、彼女が、噂の”春ちゃん”らしい。


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