華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
そうしてドアの手前まで来たとき、地面に散らばっている割れた瓶とこぼれた液体を見て、セイディーレが眉根を寄せる。


「なんだ、これは……。まさか、これを飲んだんじゃないだろうな？」


肩を抱く手に力を込められ、なぜかビクッと過剰に反応してしまった。怒られそうで怖いからとかではなく、本当に無意識に。

おかしな身体に戸惑いつつ、「少しだけ」と正直に答えた。

険しい表情でしゃがんだ彼は、液体がついた瓶の欠片を拾い上げて匂いを嗅ぐと、心底忌ま忌ましそうな顔をする。


「これはおそらく媚薬だ。お前の理性をなくさせようとしたんだろう」

「媚薬!?」


そんなものだとは思わず驚いたけれど、身体の異常と照らし合わせば納得できた。

内から湧いてくる熱さともどかしさ、少し触れられただけで敏感になってしまうのも、媚薬の効果なのだ。

こうやって私をその気にさせ、犯そうとしていたのだと考えると身震いする。


「どうしよう……どうすれば治る？」

「心配するな、時間が経てば自然と良くなる。とりあえず部屋に行こう」


セイディーレは私を安心させるように優しく言い、中へと促した。

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