華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
大切なものを守るための代償
俺がフレイヴという名を捨てたのは、リルーナが襲われた約十三年前──俺が十三歳のときだ。
いずれハーメイデン国の王女と結婚するということは半ば決まっており、ミネル姫が王配を迎えることにもなっていたため、俺の結婚相手は必然的にリルーナだということになる。
彼女がまだしっかりとした言葉を話せないような頃から、数ヶ月に一度のペースで会い、親交を深めていた。
リルーナは昔から変わらない。
とにかく純粋でまっすぐで、思ったことはすぐ口にするし、好意も隠そうとしない。
将来、俺と結婚することになると誰かから聞いてきたときも、
『あたし、フレイヴのお嫁さんになっていいの!? やったー!』
と、飛び跳ねて無邪気に喜んでいた彼女は、本当に天使のように可愛くて。
あのときが、女の子を抱きしめたい衝動に駆られた、初めての瞬間だった。
まん丸のアンバーの瞳も、シナモン色の緩くうねった長い髪も、いつも笑顔を絶やさない厚めの唇も。すべてが魅力的だと、今も思っている。
とにかく俺は、子供の頃からリルーナのことが好きだったのだ。彼女と一緒になれるなら、政略結婚でも構わない。
……そんなふうに思っていられるのは、王太子として彼女に会うのは最後となった、十三年前のあの日までだった。